FFS理論を使って新入社員研修をアップデートしませんか


FFSを新入社員研修に使いたいけれども、どういう使い方をしたらよいのでしょう」と聞かれることがあります。自己理解・相互理解を深められることはわかるものの、すでにつくっている研修プログラムとどう棲み分けるのかといった疑問から来るのでしょう。実際、FFSはどういう特徴で、何が効果なのか。改めて考えてみます。

習得したスキルを効果的に発揮してもらうためにFFSを活用

新入社員研修は、業務の基礎習得期間として設計している会社が多いことでしょう。その時に、何を伝えるかだけではなく、いかに習得した内容を効果的に発揮できるかという点までフォローしていけるのが、FFSを活用した時の1つの効果です。たとえば、職場での活躍に必要な「ジョブスキル」と「ワークスキル」という点から考えてみましょう。

ジョブスキルとワークスキル

ジョブスキルは、業務を進めるうえで身に着けておかなければいけないスキルです。たとえば営業担当者として配属される場合、自社の商材知識、自社の営業スタイル、顧客データの取り扱い方などを知っておかないと日常の仕事ができません。

一方、いくら商材の知識をもって営業に向かったとしても、表面的な説明しかしなかったとしたら、なかなか成果にはつながらないことでしょう。お客様との調整力や交渉力、時には観察力や段取り力があってこそ有用な営業トークができ、タイムリーな受注獲得が進むものです。これらを高めるのは、ワークスキルの領域です。

FFSの導入は、このワークスキル側を効果的に高めていくことに役立ちます。 たとえば案件獲得をするために、見込み客への電話営業をしている場面。営業トークスキルがあれば顧客の関心を惹きつけるのに役立ちますが、それだけではありません。

人によっては、徹底した事前準備で相手の関心を想定し、そのテーマに絞って話すことで顧客の信頼をエルこともあります。また、丁寧な事後フォローをすることで成果を出している人もいるはずです。実は、自身の特性がわかっている人ほど、自分なりの工夫によって成果を出しやすくなるのです。

個性が違えば、学び方も違う

FFSを活用すると、自分の思考・行動の特性が具体的にわかるようになります。たとえば保全性が高い人は、計画的に仕事を進めることを好みます。場当たり的な状況には不安を覚えがちですので、しっかりと準備して臨むことがパフォーマンス発揮につながります。営業電話をする時も準備に時間をとって臨む方が、結果を出しやすいはずです。

一方拡散性が高い人は、計画に時間をかけすぎるとモチベーションが下がりかねません。まず試してみることでアイデアも広がるタイプです。それをわかっていれば「電話して相手のニーズを聞きながら対応する」スタイルで進めていく方がよいでしょう。お客様から聞いた情報も武器にして、次々動くほど結果につながるはずです。

さらにFFSの活用は、新入社員の学び方をサポートすることにも役立ちます。

慣れない先輩社員がOJTを担当すると、自分のやり方をそのまま新入社員に伝えようとしがちです。もちろん、決められた手順をしっかり教えることは重要です。ただし、教え方にもすでに個性が反映されてしまっています。すると、先輩と同質性が高い新入社員は説明が理解しやすいのですが、異質性が高い人は時にストレスを感じることもあります。どう説明されると理解しやすいか、どのような思考で学ぶのが得意かというのは、個性で異なります。

たとえば弁別性が高い人には、「なぜそうなっているのか」と背景や仕組みをロジカルに伝えないと、なかなか納得まで至りません。「なんでそうなんですか」と質問ばかりされて、教える方がイライラしてしまうかもしれませんが、最初から「筋道をたてて理解したいタイプなんだ」と思っておけば、こうしたズレは防げます。

また、保全性の高い人は、体系的に積み上げて学ぶのを好みます。しかし上司が拡散性の高い人だと、体験した場面ごとに必要なことを説明しがちです。保全性型新入社員にとっては、断片的な知識は増えても全体像がわからない状況に見えてしまいますので、なかなか習得が進まないかもしれません。

新入社員に対する組織的な支援策を

個性のズレからくる思考の行き違いは、時に、「やっぱりこの職場はあわない」と新入社員が思う要因にもなってしまいます。本来、仕事があわないのではなく教えられ方や仕事の進め方が自分の個性にあわせたものにできていないだけなのですが、その峻別ができずに、上司のせい、職場のせいにしてしまうのです。

FFSのフィードバックには、本人用だけではなく上司用の解説シートもあります。もし新入社員研修でFFSを導入するとしたら、当人たちとは別途、上司層を集めてFFS理解やフィードバックシートの読み方、個性別の特性解説するワークショップを短時間でも入れてみることも有効です。教える対象の新入社員の思考行動にあわせて指導することの効果をわかっておくと、一方的な押しつけなどは起こりにくいでしょう。

ストレスを数字化できる

FFSは、ストレス値も可視化していくことができます。入社時にFFSを実施したあと、四半期に一度など、ストレス診断を継続実施していくことで、新入社員のコンディションを定期的に把握できるのです。 ストレスが高まるのは、個性発揮ができない、阻害されている状況下が大半です。新入社員は、年次や役職の違いで言いたいことが言えない状況にもなりがちです。

たまたま置かれた環境のミスマッチでつぶれてしまうことがないよう、組織的な支援策をもっておくことは有効です。せっかく入社してくれた人材がいかに活躍するかは、会社の将来にも大きく影響します。そのための環境整備には、最初から力をかけておきたいものです。