この記事は2020年7月29日に[Great Signコラム]に掲載された内容を転載したものです。
テレワークが普及したことで電子契約の普及が進んでいます。
電子契約を締結する際には電子署名が必要になり、現在電子署名には当事者が証明をして署名する当事者型とクラウドを利用する立会人型があります。今後電子契約導入を検討している方はそれぞれの違いを理解しておく必要があります。
今回は電子署名とはなにか、当事者型と立会人型の違いについて解説いたします。
電子契約における電子署名とは
電子契約を行う上で必要不可欠なのが電子署名です。電子署名とは何か、その仕組みやメリットについて解説いたします。
電子署名とは
電子署名とは、紙の契約書における押印や記名にあたるもので本人によって作成されており改ざんされていないということを証明するものです。
電子署名の付与によって電子署名の本人承認を証明することになり、証拠として有効になります。
電子署名の仕組み
電子署名は本人による署名であることを証明するために複雑な仕組みをしています。
主に公開鍵暗号方式という技術を用いており、公開鍵と秘密鍵を使って文書を暗号化/複合化します。公開鍵は一般に公開されますが、秘密鍵は受信者だけが保持するため第三者によって解読されることはなく、漏えいや改ざんの心配はありません。
電子署名のメリット
電子署名を伴う電子契約を導入することによるメリットは様々です。
契約書締結までに取引先まで出向いたり文書を郵送したりする必要がなく、業務フローを円滑に進めることができます。
また、ペーパーレス化を実現することによって収入印紙代を削減することもでき、契約書を保管するスペースも削減することが可能です。
当事者型と立会人型の違い
電子署名には2つの方法があります。
e-Taxのようにローカルでデジタル署名を行うために電子証明書を提供する当事者型と呼ばれるトラストサービスと、クラウド上でデジタル署名を行う立会人型と呼ばれる電子契約サービスです。それぞれ詳しく解説いたします。
当事者型とは
電子署名法によってこれまで有効とされていたのが当事者型で、契約の当事者が印鑑証明にあたる電子証明書を取得し本人であることを証明します。
認証サービスを行う会社に自らの本人性を証明する書類を提出することで、電子証明書が格納されたICカードや電子ファイルを発行してもらいます。
立会人型とは
立会人型の電子署名はPDFなどの電子契約書をインターネット上にアップし、双方が確認して合意することで立ち会った電子契約サービス提供事業者が契約書の締結を確認して電子署名を行います。
立会人型が普及している理由
当事者型は契約を締結する双方が電子証明書を所持しておく必要があり、その都度認証サービス事業者から認証を受ける必要があるため手間や時間がかかることから実際に使われているのは立会人型です。
導入から契約の締結まで簡単に行うことができ、電子契約を利用している企業の約8割が立会人型を採用しています。
立会人型と当事者型の現状と今後
立会人型と当事者型の現状と今後について解説いたします。
立会人型は法的に有効?
立会人型は契約の当事者本人によって電子署名を施されているわけではないため、電子署名法に基づく文書の有効性が曖昧とされてきました。
しかし政府は電子署名に関して見解を公表し、電子証明書のない電子署名も法的に有効であると認めました。
2001年に施行された電子署名法では電子証明書を利用した本人による署名を想定していましたが、現在広く普及しているのは立会人型の電子契約であり、政府も「利用者の意思に基づいていることが明らかであれば要件を満たす」と公表しています。
近いうちに訴訟においても有効であることが示されると言われています。
海外の事例
エストニアでは国民一人ひとりに国民IDが与えられており、ICチップを埋め込んだeIDカードとして所持しています。これをカードリーダーに差し込んで暗証番号を入力すると、完全無料で電子署名を行うことができます。
インターネットやカードリーダーなどの環境が整っていればいつでも使用することができ、ほぼ100%の国民に普及しているといいます。
確定申告や薬の処方までオンラインで行われており、法人だけでなく個人も電子署名を暮らしの一部として役立てている事例です。
今後の展望
日本にも個人を番号で特定するマイナンバー制度が存在しますが、実際他のシステムとの連携がうまくいっていないのが現状です。マイナンバーカードのICチップには電子証明書を格納することができるため、取得さえすれば当事者型として簡単に電子署名を行うことができます。
マイナンバーカードがエストニアのように全国民に普及すれば、本人性を簡単に証明することができ法的にも有効です。しかし現在立会人型の方が訴訟においても有効になる動きがあるため、現状維持が予想されます。
まとめ
現在電子契約において普及しているのは手軽に採用できる立会人型です。これまでは法的な有効性が曖昧でしたが、在宅勤務による電子契約の需要が高まったことで立会人型も今後訴訟での法的有効性が認められる見込みがあります。
本人による証明を的確に行う必要がある場合はマイナンバーカードなどを用いて当事者型での署名が必要ですが、そうではない場合はまず立会人型の手軽な電子契約サービスを導入してみてはいかがでしょうか。
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