電子契約書には誰が押印しても大丈夫?契約名義に関する疑問を解決!


この記事は2020年6月24日に[Great Signコラム]に掲載された内容を転載したものです。

書面での契約の場合は署名や記名押印、電子契約の場合は電子署名によって契約が締結します。それでは、名義人が代表取締役以外の従業員が押印・電子署名を行っても問題ないのでしょうか。

今回は、誰が押印しても契約は有効になるのか、契約名義に関する疑問を詳しく解説いたします。

代表者が押印するわけではない事実

契約をする際は契約を締結させることを自らの意思で証明できる力がある人(代表取締役等)が押印をするというのが前提となっています。しかし、実際はその限りではありません。

契約における押印の意味

契約書を作成した段階で「契約に同意している」ということになりますが、押印を加えることで「確かに契約内容に同意したという証拠」という二重の同意の意味が含まれます。つまり、契約を結ぶお互いが「契約内容は間違いないものだ」と認めることこそが押印の役割となります。

締結権限による有効性

契約書に押印や署名がないままでは、契約相手が「知りません」といえば契約の有効性が失われてしまいます。そのため、契約を行った両者の意思が間違いないものだと証明するために押印が必要とされています。

契約書の押印に使用される印鑑は「実印」です。

インク内蔵型の印鑑が不可なのは、量産されていて誰でも同じ印影を入手できるからです。
100円程度で簡単に購入することができますので、インク内蔵型では本当に締結権限のある人のものか証明できません。

すべてを代表者が押印するのは困難

企業であれば代表取締役などに契約の締結権限がありますが、企業の規模や手掛けている事業の量によっては全ての書類に目を通して押印するということは非常に難しいことです。

そのため、代表者は他の役員などに権限を委任することで押印をしているケースが多くなっています。

押印における契約名義の問題

代表取締が自ら契約名義人となり契約締結を行うことがもっとも確実な方法ですが、多くの企業では締結権限を他の役員に委任して契約を行います。

押印における契約名義の問題について、実際に多くの企業で用いられる代表的な手段を3種類ご紹介いたします。

従業員の権限委譲による押印

こちらの方法は契約を行う人間が代表者ではなく代理人となるため、契約名義人を代理人に変更する必要があります。取引先の代表者は代理権を授与された従業員が具体的に委任されている権限がどの程度なのかを確認しておく方が安全といえるでしょう。

名義人は代表者のまま代理で押印

こちらの方法は、契約名義人を代表者にしたまま押印だけを代理人が行うという方法です。

名義が違うと本当に契約が成立したのか疑問に思われてしまうことがあるため、契約者を代表者名のままにしているようです。

日本では多くの企業が押印の代理を行っており、契約の真正性が問われることも非常に少ないため、誰が押印したかを問題視する声は少ないようです。

管理部門による代行

企業によっては押印のみを担当する管理部門もあります。

企業規模が大きいと契約書だけでもかなりの数になるため、独立した部門の管理部門長が社内の規定で決済が下りたもののみを代理で押印するという企業も多くあるようです。

電子契約での権限を確認するには?

紙の契約書には押印が必要ですが、電子契約書には不要です。

代表者が契約する場合

電子契約書で代表者本人が契約を締結する場合、電子署名を使います。

電子署名は、契約書を誰が作成したかというほかに、契約内容の改ざんが行われていないことを証明する2つの役割をもっています。

クラウド型電子契約書の本人確認は、メール認証という方法が一般的です。

〈利用方法〉

  • 送信者が契約書のデータをサーバーにアップして取引相手のメールアドレスを入力する
  • 電子契約のプラットフォームが取引相手アドレスに向けてアクセス専用URLを自動作成、送信
  • メールを受信した取引相手がURLをクリック、契約当事者として契約書データにアクセスすることで同意が成立

役職員が契約する場合

役職員と契約する場合、本当に相手が契約締結の権限を持っているのか分からず困ることがあるかもしれません。そんなときは、以下の4つの方法で確認をとってみましょう。

〈委任状にアドレスを記載してもらう〉

委任状にメールアドレスを記載してもらうことで、記載されたメールアドレスの所有者が契約締結の権限があるかを事前に書面で確認をすることが可能です。最初に電子契約用メールアドレス確認書を相手に作成してもらい、契約を記載されたメールアドレスで締結することを合意しておくとスムーズに契約が進みます。

〈社内規定を提出してもらう〉

契約権限のある代理人に契約締結の権限に関する社内規定を提出してもらい、本当に締結権限があるかを確認する方法があります。

仮に虚偽の内容を提出された場合、訴訟が起きても善意無重過失にあたると認められやすくなることがあります。

〈代表者のアドレスをccに含める〉

締結権限があると名乗る従業員のメールアドレス宛にメールを送る際、相手が所属している組織の代表者メールアドレスをccに入れておく方法があります。こうすることで代表者にもメールが届くので、内容の確認を行える状態にしておくことができます。

仮に締結権限をもっていない従業員であった場合、みなし追認や監督責任が代表に生じることを主張できるようになります。

〈役職を確認する〉

締結権限があると名乗る従業員の役職のみを確認する方法です。

名刺や他の従業員との接し方を判断材料として、その従業員が一定以上の役職に就いていることを確認することで権限があるとみなすという方法なので、相手によっては使わない方が無難といえるでしょう。

重要な内容の取引や、多額の費用を必要とする契約であるときは特に注意するようにしましょう。

まとめ

紙の契約書は誰が押印したのかを知ることは非常に難しいとされています。電子契約書で代表者に直接本人確認をとる方法がもっとも確実ですが、権限を委任されている従業員がいる場合は本当に権限があるのかを確認しなければなりません。

安心して契約を結ぶためにも、契約相手と不利にならない状態をつくることを意識しましょう。

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