脱ハンコを実現!電子契約の普及を阻む理由とは?


この記事は2020年7月29日に[Great Signコラム]に掲載された内容を転載したものです。

新型コロナウイルスの影響によってテレワークが普及し、脱ハンコを推進する企業が増えています。しかし様々な要因から契約書の電子化がなかなか進まないというのが現状です。

今回は、脱ハンコを阻んでいる理由と電子契約のメリット、脱ハンコと特に関わりが深い電子署名について解説いたします。

脱ハンコを阻む理由

脱ハンコに向け、電子契約への切り替えが普及していますが、ハンコ文化を覆すことは本当にできるのでしょうか。脱ハンコの現状について解説いたします。

脱ハンコの現状

現在、印鑑を押すためだけに電車に乗って出社する必要性について議論されています。

印鑑が必要な書類が一体どれくらいあるのか、新型コロナウイルスの拡大が懸念されるなか、出社を余儀なくしている会社側に安全配慮義務違反が問われるケースもあるようです。

印鑑の必要な書類

印鑑が必要な契約には定期借地契約、定期建物賃貸契約、訪問販売などがありますが、なぜ印鑑が必要なのでしょうか。

口頭でのやり取りでも契約として成立させることは可能です。

ですが、複雑な契約などの場合、書面に残しておくことで、合意について争った場合などに証拠として活用することができます。

また、文書に書かれた内容について意思表示がなされたことを、契約書などに押印することによって推定するといった民事訴訟法の規定もあります。どこまで証拠として残すのか、印鑑が必要かどうかは自己判断する必要があります。

ハンコ文化を覆すのは困難

脱ハンコを検討する際に紙ではなくPDFでやり取りする場合、改ざんの可能性があるため防止策が必要になります。重要な文書は紙と同様の改ざん防止策を講じなければならず、契約の当事者双方が同じサービスを利用しなければいけません。また、書面でのやり取りが必須の契約が存在することから、脱ハンコを進めるには法の改正が必要とされています。

これらの要因から現時点で完全に脱ハンコを実現するのは困難かもしれません。

脱ハンコを実現する電子契約

脱ハンコを実現するために、電子契約サービスの利用が推進されています。電子契約サービスとはどのようなものなのか、また、脱ハンコのメリットについて解説いたします。

電子契約とは?

電子契約とは、これまで書面に押印して取り交わしていた契約書に代わって電子データを使ってやり取りするものをいいます。

紙の契約書の場合、記名押印によって本人に合意の意思があるとみなされ証拠としての効力が認められますが、電子契約にも同様の規定が当てはまります。ただし、電子契約書には直接押印することができないため、電子署名が用いられます。

電子契約と脱ハンコのメリット

電子契約の導入による脱ハンコのメリットは、コスト削減と業務効率化です。

契約書をプリントアウトする際に発生する用紙代やインク代、収入印紙代、郵送する際に発生する人件費や切手代など様々なコストをカットすることができます。また、ハンコを押すという業務がなくなることで大幅に効率をアップさせることに繋がります。電子契約の中には契約書の作成だけでなく、管理や進捗状況を確認できる機能がついたものあります。

脱ハンコを進めるためにすること

脱ハンコを進めるために、扱っている文書を仕分けしましょう。

押印が必要な文書と押印の代わりに別の方法によって成立する文書、押印を必要としない文書の3つに分類し、押印を必要としない文書から電子契約に移行していくのが有効です。

契約する相手方にも電子契約サービスを利用してもらう必要があるため、事前に確認を行ったうえで導入しましょう。法律上、書面発行が義務化されているものは電子化することができないため、自社にとって脱ハンコは本当に必要なのかをよく検討する必要があります。

脱ハンコを促進する電子署名サービス

脱ハンコを促進するため、印鑑に代わるのが電子署名です。電子契約における電子署名の役割について解説いたします。

電子署名とは

電子署名とは、紙による契約における印鑑と同様に電子文書が正式かつ改ざんされていないということを証明するものです。PDFなどは直接押印することができないため、改ざんされていないことを証明するために指定認証局が発行する電子証明書といつ押印したかが証明できるタイムスタンプを付与します。

この2つによって電子署名は効力を発揮することができます。

いつ押印したかを証明できる

電子署名は「誰が」「何を」契約したか証明することはできますが、「いつ」押印されたかは改ざんされている可能性があるため証明できません。

しかしタイムスタンプは時刻認証事業者によって提供されているため、文書が作成された時刻について客観的に信頼性を保証することができます。タイムスタンプが付与されることによって契約の期限が明確化されるため、法的効力がより強化されます。

電子署名関連の法律

電子契約は電子署名法により、本人によって行われる電子署名が付与されていれば真正に成立されたものとして推定されます。ほかにも電子署名について定義されています。

このように電子署名は印鑑の代わりとして契約書に法的効力を与えることが法律でも認められています。

まとめ

在宅でのテレワークが普及したことで印鑑の必要性について言及されることが増えました。脱ハンコを掲げる企業も徐々に増加している傾向にあり、このまま電子契約導入の波が広がっていくことが予想されます。ですが、法的に紙の契約書が必要なケースもあるため完全に電子化するのはまだまだ先になるといわれています。

ですが、脱ハンコにはメリットがたくさんあります。電子契約サービスの導入を検討してみてはいかがでしょうか。