もう少しで5月も終わりますね。5月病(ごがつびょう)って言葉を聞いたことありませんか。新入社員や新学期など、新しい環境に適応する際に起こるストレスやうつ症状を指します。
4月から5月にかけては新たな生活や仕事が始まる時期でもありますので、ストレスによる症状が現れやすいとされています。新たな環境への適応や社会生活、さらに季節の変わり目といった要因への身体のストレス応答が原因とされ、不安や疲労、集中力の低下、やる気の低下、鬱々とした気分、倦怠感、食欲不振などの症状が見られることがあります。
ストレスが原因だね。
心身の不調をかかえ病院にいくと「ストレスが原因じゃないかな」と言われたことありませんか。FFS理論はストレス学をベースに成立していますので「ストレス」についてよく話すことがあります。数千人とお会いしてきてストレスとはなにか?を正しく理解されている経営者、人事部また個人のかたは、驚くくらい少ないです。
にも関わらず採用の場面では「ストレス耐性が高い人がいい」「自分はストレスに強いんで」という会話がでます。これは誤解からくる誤用なのですが、漠然と「ストレスはよくないもの」と認識していると推察できます。
ストレスについて正しい認識をもつことで、採用はもとより、組織内の人間関係改善やストレスケア導入が実装しやすくなります。その結果、働きやすい環境と働きがいのある環境をつくり、離職率を下げていくことができます。ただしい知識は自己防衛の大前提です。
採用がむずかしい、そもそも労働人口が減っている状態で、いつまでも新規採用に注力シフトするのは得策ではありません。いまいる従業員が安心して働くことができる環境条件を整えることと、自然退職にともなう新規採用をおこない、自社にとって最適なオンボーディングをおこなうこと。この連立方程式を解くのが経営者のミッションです。
ストレスとはなにか
ストレスとは、身体や心に負荷をかける外部からの圧力や要求に対する心身の反応です。ストレスは、仕事そのもの、人間関係、経済的な問題、第三者から来る否定的な言動、言語化できない焦燥感や不安、うれしいこと、たのしいことなど、さまざまな要因によって引き起こされます。この要因はストレッサーといいます。
ストレスは、生存に必要な反応としても機能するため「いいストレス」と「悪いストレス」があります。ストレス状態が長期間続く場合や適切に管理されない場合には、身体や心の健康に悪影響を与える可能性があります。
この大前提がご認識され「ストレスってよくないものでしょ」とネガティブな面が強調されているのです。メンタル不全についても「気合が足りない」「がんばっていない」に代表されるように精神論から語られることが多いのが現実です。復職してもおなじ職場と人間関係ですから、なんの対処にもなっていません。
心とはなにか?
メンタル不全という言葉がでましたので、心について少しだけ触れます。心の概念は、哲学、心理学、宗教、文化などの異なるコンテクストで過去より議論されてきましたが、現在は「心は脳が作り出す現象」と位置づけるのが主流になっています。これを心身一元論とよばれています。
脳は、人間の思考、感情、行動、情動、身体の自律的な機能を制御する臓器です。 脳と心の関係は、脳科学、心理学、哲学などの分野で研究されており、多くの一般書がでていますので、楽しみながら読むことができます。
メンタル不全とは脳のなかで起きている事象で、第三者からはうかがい知ることが難しいのですが。例えば大声、罵声、嘲笑、怒りが渦巻いている空間にいくと気分が良くないですよね。そのネガティブさを毎日自分が浴びているとなったらどうでしょうか。こうしたストレッサーによって脳が疲弊、痛めつけられれる日々が続いているとしたら。脳は今日も忙しいのです。
ストレスをなくすことはできますか
アンサーは「無理」です。内外の刺激に対する心身が応答している状態がストレスですので、0にすることが難しいのです。
ストレスを完全になくすことは難しいかもしれませんが、適切な方法で管理することは可能です。FFS理論で個性診断をおこなったかたがには、個別のケア方法と立ち居振る舞いの変化についてアドバイスをさせていただくのですが、ストレスを軽減するための一般的な方法というのもあります。(刺激をうけるとコルチゾールの分泌量が増えます。測定する機器もあります。)
ストレスの原因を特定する
まず、どのような状況や要因がストレスを引き起こしているのかを理解することが重要です。人間関係だとしたら、どのよう発言や行動なのか。物理的な気温や湿度、狭いとかありますよね。
ストレスの管理方法を見つける
ストレスを軽減するための個々の方法は人によって異なります。これが個性の面白いところです。リラックス時間をつくる、深呼吸して酸素を体内に取り入れる、ヨガ、ピラティス、ウォーキング、フィットネス、マインドフルネス、音楽療法、運動、趣味に没頭することなど、さまざまな方法があります。これら大脳基底核が司る情動を呼び起こすのと、方法によってはデフォルトモードネットワークを活性化してくれます。
健康的な生活習慣
基本的なことなのですが、健康的な食事、十分な睡眠、適度な運動は、身体と心の健康を維持し、ストレスを軽減するのに役立ちます。
ストレス状態の開放
感情を表現することや、信頼できる友人や家族と話をすることで、溜まったストレスホルモンを解消することができます。涙のなかにはストレスホルモンが含まれているそうで、泣くとスッキリすることがあるは相関関係があるようです。
タイムマネジメント
仕事や日常生活の中でのタスクを適切に管理し、プライオリティを設定することも重要です。日本人の6割は規則正しさを好むというデータがあります。
休憩とリラックス
日々の生活にリラックスや休息の時間を組み込むことも重要です。過重労働、働き方改革関連法案でも指摘されてきましたが、脳・心臓疾患については,長時間労働が発症リスクを増加させることを指摘する研究が蓄積されてきており,両者の因果関係はある程度のコンセンサスが形成されつつあります(長時間労働と健康,労働生産性との関係)
ストレスを完全になくすことはむずかしい場合もあります。360℃、あらゆるストレッサーにさらされており、自分ではコントロールできない環境がほとんどだからです。企業からストレスを要因とする休職や離職、あるいは心理的安全性の高い組織づくりをご相談されると、研修の対象は「経営陣」「人事部」「管理職」が優先されます。
従業員にとって階層が上の方々がストレッサーとなるため、このレイヤーのかたがたに正しい認識をもってもらうのが組織改革にはいちばん良いのです。(一番疲弊しているのはミドルマネジメント層です)
次回は組織においてストレスがネガティブになる要因について書く予定です。