リモートワーク環境に移行した。あるいは出勤制限をされている企業も多いと思います。
もう全然、仕事進まないんですけど!
つい先日、こんな言葉を現場のかたから伺いました。また3月からは、人の入社・異動。さらには戦略の変更等によって、どの会社でも組織改編がおこなわれるシーズンです。めまぐるしく変わる組織もあるかもしれません。
せっかく意図をもってつくった各部門、各チーム。ただ所属員の組み合わせが変わっただけと思うのは、もったいないです。このメンバー構成であれば、どうやって高いパフォーマンスを発揮できるのか。そのためにはどうすればよいか。マネジャーとしてぜひ考えてみてはいかがでしょうか。
チームの成果をだしたい
「チーム運営が思い通りにいかない……」。マネジャーとしての成果が期待されるあなたは、そんな悩みを抱えていませんか?
悩む理由のおおくは「思った通りのチーム成果が出ない」、「メンバーといい関係性を結べている気がしない」といったことから、「あのメンバーとどうもうまくいかない」、「アイツは勝手なことばかりする」と特定メンバーへの悩みなど、いろいろと想像されます。
「こんな状態になっているのは自分のせいなんだろうか?」「そもそもメンバー構成が悪いんじゃないの?」と、つい環境のせいにしてしまうこともあるかもしれません。
しかしチーム状態を左右するのは、ズバリ、「人と人との関係性」です。これって恐らくほとんどのかたが気づいて、知っている事実のはずです。
同じ人数で同じ目標を目指す2チームがあったとしても、メンバーが違えばチームの特徴も全然違ってきます。逆にいうとコーチが変わればチームが変わる、のはプロスポーツの世界ではよくみかける光景ですよね。
そこでマネジャーなら、自分のチームがどういう状態にあり、自分はチームをどうしていきたいのか。つねにチームの状態に目を向ける必要があります。しかし「チームの関係性」なんて、見ることができるものでしょうか?
前にも本シリーズでご紹介したFFS理論は、個々人の個性を知ることができるだけでなく、チームとしてのまとまりや適正についても見える化することができます。たとえば……
- このチームは同じタイプの人(同質性)が集っているのか、違うタイプの人(異質性)が集っているのか
- 現メンバーの組み合わせは、どのような関係にあるのか
- このチームは生産性が高まる組み合わせなのか
といったことを知ることができるのがFFS理論です。組織開発とよばれる仕事もそうであるように、チームを任されたときには、少なくとも現状把握がチームマネジメントのスタートです。
「最適組織」と「最強組織」
FFS理論を学ぶなかで「最適組織」と「最強組織」という言葉がでてくるときがあります。改めて「最適組織」とはなにか。考えてみましょう。
FFS理論では「目標に合う能力・適性を持つメンバーだけを集めた組織」を「最強組織」と呼び、「個々のメンバーの能力・適性を最大限に活かす組織」を「最適組織」と呼んでいます。
「最強組織」は「勝つための組織」。「最適組織」は「負けない組織」です。FFS理論の個別的特性診断によって人の個性を計量化し、適材適所を実現するのがFFS理論の導入目的です。
同質化する組織は「最強組織」に向いている
誰しも、自分と似たタイプの人のほうが、コミュニケーションをとりやすいですよね。仕事のチームとなると、なおさらです。マネジャーにとっても同じこと。。自分と同質(同傾向)の人で固められた組織ほど考えがすぐ伝わりやすいので、マネジメントしやすいと思うはずです。
同じようなタイプの人だけで固めた場合、「最強組織」に近づけることは可能です。同質性が高いので、方向性がすぐまとまりやすく、短期的な成果を出すには向いています。目標が明確な期間限定プロジェクトなどには有効でしょう。
しかし、同じタイプで固まるだけでは「最適組織」には近づきません。組織の持続的な成長を考えるならば、長期的に成果を出し続けられる組織づくりが求められます。補完関係がつくれるようなメンバーの組み合わせこそ重要なのです。
FFS理論では、最適な異質メンバーの組み合わせでつくられたチームこそ最も生産性が高くなるという結果が出ています。ある実験によると、8人で12人分の生産性を発揮したというのです。ぜひそんなチームを実現してみたくならないでしょうか。
強みの組み合わせで補完関係のあるチームをつくる
個性の違いは、日常的な発言によく表れます。今回はFFS理論の4分類による「MLタイプ」と「TGタイプ」を比べてみましょう。
「MLタイプ」は、相手に合わせた柔軟性を持ち、コツコツと積み上げていくことを得意とする個性です。たとえば会議の場面では、全員の意見をしっかり引き出したり、現実的に固めたりすることに思考が向きます。
「なるほど」「そうしましょう」と他人の意見を聞いたり「これで抜け漏れないかな」「確認ですが」などの発言がよく出るかもしれません。
一方の「TGタイプ」。同じく相手に合わせた柔軟性を持ちますが、アイデア豊富で、思ったことを試してみたくなる行動派です。会議では「なるほど」と他者意見に耳を傾けますが、同時に「とりあえずこうしない?」「これおもしろいから試してみない?」といった発言をしがちです。「ここに行ってみたんですけどね」と、先に行動している場合もあるかもしれません。
ちなみに、、、弊社の前田はTGタイプです。
マネジャー自身が「MLタイプ」だとしたら、「TGタイプ」のメンバーはマネジメントしづらい面があるかもしれません。
みんなで決めてからやろうと言っているのに、なぜ先に行動しているんだ!
せっかく順番に詰めていっているのに、急に違うアイデアを発言されても困る
しかし「TGタイプ」のメンバーにも言いぶんがあるのです
全員が同じことをやったら、チームとしての意味ないじゃないですか
行動してみて、はじめてわかることあるでしょう。
さぁ、いかがでしょう。思い当たる節ありませんか?(ちなみに「TGタイプ」の出現率、日本では25%前後だそうです。)
この個性の違いをマネジャーとしてはぜひ、活かしたいところです。個性が違えば、価値観も行動も変わって当然。たとえば企画のための情報を集めているなら、中でコツコツとデータ分析をする人と、外の交流会に出て情報をとってくる人と。両者を組み合わせるほうがチームにとってプラスになるはずです。
個性の違いに合わせて会議をデザインする
たとえば会議での工夫をしている組織があります。
なにか新企画の発案があったとしましょう。ここから企画に落としていくときに、まず発案者と「TGタイプ」メンバーを何人か募ってブレスト会議を開催。ここで十分アイデアが出尽くしたタイミングで、「MLタイプ」のメンバーに入ってきてもらいます。
ここまでの経緯を一度「MLメンバー」に聞いてもらうと「では、図で整理してみますね」「段取りとしてはこうでしょうか」といった視点が投げ込まれます。こうして、アイデアの拡散フェーズから収束フェーズへと、建設的に移行していくことをねらっているのです。
もちろん「あなたはMLタイプだから最初から入らなくていいよ」と決めつけるものではありません。あくまでどの個性が高く出るか、という視点だけですので、企画力や計画力といったスキルとは別の話です。
ポイントは、マネジャーがメンバー全員の個性を把握して、適材適所を進められるか。あるいは、業務付与のしかたを工夫していけるか。特に自分とはちがう個性の人に、自分流を押しつけないことが大事です。
メンバーの発言1つで、場の空気も変化
「最適チームづくりと言っても、メンバー交代ができるわけじゃないし」「業務量が多すぎて、個性の違いなんて考えて配分できる余裕がない」と思う人もいらっしゃるでしょう。確かにその通り。すでにチームメンバーもやるべき業務も決まっていたら、チームづくりの工夫の余地なんかなさそうです。
しかしそれでも、チームづくりを考えるのはとても重要です。たとえばチーム会議で最初の発言者を誰に振るか。いろんな意見が出たときに、「〇〇さんまとめてよ」と役割を与えるには、誰か最適なのか。
一見ランダムにあてているように見せながら、要所で適する個性の人に発言してもらうだけで、チームの活性化や協働感はぐっと高まります。
たとえば「この会議は拡散する場にしよう」と考えているのなら、最初は新しいことに前向きで挑戦したい人に発言してもらうほうがよいでしょう。場が勢いづきます。
もしすごく慎重な人に振ると、最初からリスクを気にするような発言が増えます。すると次の人も「あんまり無茶なことを言ったらいけないかな」と思うようになります。こうした個性の違いを想定したうえで、意図的に場をつくっていくのもマネージャーの力量です。
まとめ
マネジャーにとっては、チームづくりこそ大きな仕事。その時に意識してほしいのは、メンバーの個性を引き出して組み合わせる、最適組織づくりの発想です。そのためにまず、メンバーそれぞれの個性を把握し、チーム会議のデザインを考えるところからはじめてみてはいかがでしょうか。
- チームの関係性は可視化できる
- 長期的な成果づくりに向けて、最適組織づくりをめざす
- 会議デザインが、チームづくりの第1歩