テレワークがすすむ組織のマネジメントのカギは、個性の見える化にあり。


テレワーク進んでいますか?会社全体がテレワーク化になっている組織もあれば、一部がテレワークだったり、時差出勤だったり。組み合わせている数を含めれば一昨年よりは「テレワーク」がすすんでいる印象があります。同時にわたし達はたらく人の意識にも変化が見られるようです。(第3回「働く人の意識調査」:公益財団法人 日本生産性本部 令和2年10月16日)

テレワーク環境でおきる「いま連絡していいの?」

もっとも大きいのは捺印の電子化に代表される業務フローのデジタルシフトがすすんでいること。と言いつつも総務経理部が「伝票整理」「請求書発行・受取」のため出勤せざるを得ない会社もおおく、まだまだ業務改善の途上なのは衆目の一致するところです。(ニュースでみる自治体庁舎内の様子をみればいかに困難なのか一目瞭然ですよね)

やることが明確であれば自身の仕事は粛々と進められます。しかし現実的には、どの仕事も1人で完結するわけではありません。前後の受け渡しや、協力して知恵を出す必要があります。なぜなら仕事は合意形成の積み重ねで推進されていくものだからです。

オフィスへ出勤していたときと異なるのは、相手の状況が視覚に入らない点です。「今連絡していいのか」「どうなっているのか」と気をもまず、いい協働を生み出すために、組織づくりの工夫について考えてみませんか。

テレワーク環境下で起こるチーム内の遠慮や憶測

テレワーク環境では「暗黙知」は共有されにくい。

コロナ禍への対応は、テレワークを大きく加速させました。内閣府の調査によると、テレワークを何らかの形で経験した人は34.6%で、東京23区に限ると55.5%でした(新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査(内閣府:令和2年6月21日)。

2019年9月末時点でのテレワーク導入率は20.2%(令和元年通信利用動向調査の結果:総務省)で、コロナ禍で急ぎ対応した会社も多かったことがうかがわれます。

ここで考えたいのは、「組織、部署(チーム)がテレワーク対応に移行できているかどうか」ではないでしょうか。これまで暗黙的な慣習が強かった組織ほど要注意です。

画面越しでは、感情のゆらぎをつかみとりにくい

たとえば、毎週集まってミーティングをしていたチームを例にします。必要な相談は、その場でディスカッションの種として話題にのぼり、お互いの意見のすり合わせをおこない、つぎのタスクにする、というプロセスを経るケースがおおいはずです。

テレワーク導入後、ミーティングはそのままオンラインに移行しました。どうでしょう。「どうも前ほど活性化していない」と感じることがありませんか。

注意して画面をみていたら「特定の人だけが話す」「尋ねないと答えない」状況になっていた――あれ?これでいいのか?と感じているマネジメント職のかたがおおぜいいらっしゃるのでしょうか。「ウェブ会議を活況化させたいのだけど、どうしたらいいか」とご相談をいただくことが増えてきました。

こうした状況には、発言タイミングが難しいオンラインの特性が影響しています。場の空気が見えづらい分、「これは言わなくてもいいかな」「今はタイミングではないかな」と考えをめぐらせ、時に憶測しながら参画する状況が生まれがちです。これは参加者の個性によるもので、いわば空気を読んで「話さないようにしよう」と遠慮しているのです。

さらに年次や役職の差がくわわれば、この遠慮も加速します。まったく悪意はありません。またその同僚の姿をみて、「なるほど、オンライン会議では、こう振る舞えばいいのか」と伝播します。

どうでしょう。これってオフラインでもオンラインでも同じだと思いませんか。オフラインであれば、容易に「どう?」と声がけができたのか、オンラインではどうもやりにくい。これが「あれ?これでいいのか?」というモヤモヤ感の正体です。

ストレス(外的刺激)の受け止め方は、人それぞれ

オンライン移行によって1番気にしたいのは、個性によって受け止めかたが違うということ。まったく同じシーンに複数名が参加していれば、個性によってストレスの捉えかたは変わります。要は「人それぞれ」なのです。「それぞれ」のことを「個性」と呼ぶのです。

画面越しでは、表情や仕草が読み取りづらくなります(個人的にはリモートワーク用のリングライトおすすめです)。「人それぞれ」の受け止め方に気づかなかったり、遠慮や忖度が起こっていることにも気づかなかったりします。FFS理論的にいうと、A因子、凝縮性がたかく率先垂範タイプのマネジメントのかたは、気づきにくい傾向があると考えられます。

どうでしょう。こうしたシチュエーションが積み重なっていくと、チームの一体感づくりも難しく、組織力発揮が程遠くなっていくと思えませんか。

話せば一瞬で済んでいたことも、気づいたときにはおおきなズレに

日本人は「和・輪」を重んじる傾向があります。つまり納得したうえでの合意形成を好むのです。たとえばチームにAさんとBさんがいます。Aにさんは常に結論を先に知りたい派。Bさんは相手の反応を気にする派です。

テレワーク中にBさんがAさんにメッセージをおくりました。Aさんが開封してみると、どうも要点を得ません。そこでAさんは「結論を教えてください」と返信しました。

返信を読んだBさんはAさんが怒ったと勘違い。あわてて長文のメールを再送します。

Aさんはさらに理解ができません。もう面倒だとBさんを無視しました。

こうなるとBさんは返信がこないのが心配になりますが、かといって追っかけることもできません。こうした日々があちこちでおこなわれていると、結果的にチームが分解――といったことも起こりえる未来です。

言葉の身体性が減少する世界

オフィスではちょっとした会話で済んだのに。それは口から発する言葉には「音」で強弱、抑揚、緩急がついているため、言葉の表情がみえるからです。このことを言葉の身体性と呼びます。言葉の身体性が少なくなった世界では、メッセージの往復の中でどんどんズレが生じてしまう例がたくさんあります。

「さっき送ったメッセージについて、説明させてください」と電話した経験、ありませんか?

お互いが相手を軽視しているわけではないのにすれ違ってしまったのはなぜか。それは、自分と相手の思考にちがいがあること気づかず、「自分の思考」だけで押し通そうとしたからです。

個人が変われば組織が変わる、組織が変われば社会が変わる

行動する理由やストレスを感じるポイントは、人それぞれ異なります。そこに思考の違いが表れます。ちがいが分かれば反応は予測できますが、ちがいが分かっていないと「何でそうなるんだ」と怒りにまで至ってしまうのです。

解消するポイントは「自己理解」と「他者理解」です。これを当社では個人が変われば組織が変わる、組織が変われば社会が変わる、とお伝えしています。

個性の相互理解で、建設的な企業風土をつくりませんか

お互いがどういう個性の持ち主なのか。ある程度把握できるなら、行きちがいはかなり減少します。コミュニケーションをマネジメントすることができるのです。ではどうやったら、個性を把握することができるのでしょう。

ここまでお読みいただき「いま起きている!」「そうそう」と思うかたもいれば、「それって、相手に合わせること?」「自分にできるのに、相手ができないだけじゃ?」といろいろなご感想があると思います。長くなりました。ここで「FFS理論」が登場します。

いかにお互いが理解して信頼しあい、補完しあえるチームをつくるか。そうした観点での研究は、昔からいろいろとおこなわれてきました。チームビルディングという考えも1990年代よりさまざまに提唱されています。その中でも米国国防機関で使われていた「FFS理論」は人の個性理解をするうえで信頼性ある1つの手法です。

FFS理論とは

FFSとは、Five Factors & Stressの略語です。人の思考行動特性を5つの因子とストレス値で定量化し、個々人の個性を表したものです。また、人と人との関係性や、最適な組織編成についても、理論的な有効性を示すことができるものです。(FFS理論ついて

各人の個性はチャートと解説文で示されますので、本人もチームメンバーも、それを見て相互理解を深めることができます。 先ほどのAさんとBさんの例を考えてみましょう。

個性を知るのは、「そうだったのか」と理解するため

FFS理論によって、Aさんは「弁別性」という因子が強く、Bさんは「受容性」という因子が強いことが示されましたとします。

一般的に「弁別性」の人は、論理的に物ごとを把握したい個性です。そのため理由と結論をクリアに、合理性をもって話すことを好みます。

いっぽう「受容性」の人は、相手にあわせよう、環境を受け入れようとする意識が高い個性です。「弁別性」の人からすれば、曖昧に見えてしまうことがあります。

さて視点を組織にもってくると、重要なのは、あらかじめ部署・チームメンバー全員の個性を可視化し、しかもお互いがその情報を知っていることが好ましいといえます。

Aさんが「弁別性」の高い人だ、とあらかじめめBさんが知っていれば、1回目の返信が来た時点で「あ、しまった。Aさんは結論を知りたい人だった」と思いだし、結論を補足で送信できたことでしょう。

「Aさんが怒っているんじゃないか」と変に勘繰ることもなく済ませられます。ここで余分な心理的負担を感じることがなくなりますね。

Aさんは「Bさんは受容性が高いから、気をつかってくれたのかもしれない」と思うことで、「結論はこれでいいですか?」と先回りして提案するようなメールで返信ができたかもしれません。

「結論はこれでいいですか?」「結論はなんですか?」

並べてみると、ずいぶん印象がちがうと思いませんか。

コミュニケーションをマネジメントするということ

「余計な勘ぐりをとり除く」や「相手の特性を判断したうえで先手をうつ」ができれば、コミュニケーションのひと手間がへり、建設的なやり取りに終始できます。遠慮と配慮はちがうのです。生産性をあげるとしても有効なだけでなく、テレワーク下でも風土を活性化させ、新しい価値創造への可能性を広げることにもつながるはずです。

まとめ:個性理解が協働を進める

テレワーク環境下では、お互いが目の前にいない状況でやり取りするため、ちょっとした表現で理解のズレが起こりかねません。個々人にタスクを分解するほうが業務をすすめやすくいのですが、その反面、協働意識が持ちづらくなります。

現実的にはタスクのスムーズな受け渡しや共通の目的意識がないと、組織的な生産性は高まりません。日報やタスク管理表でチーム全員の状況を見える化するのはもちろんですが、個性の違いがもたらす余計な憶測を減らすのも、実は組織力強化の大きなカギです。さらにストレスマネジメントにもつながるはずです。

今回記した以下のポイントを参考に、ぜひテレワーク環境下の組織づくりを進めて、「あたらしい仕事様式」を一緒につくっていきませんか。

  • テレワークに適応した組織づくりは、意図的な再構築から
  • 多様性を引き出すチームづくりは、メンバー全員が相互に個性を知るところから
  • 個性の可視化が、「余計な勘ぐりをとり除く」や「必要に応じて先手をうつ」を可能にし、協働の源となる

当社ではFFS理論の導入による組織の適正化をご支援いたしております。ご興味いただければお気軽にメッセージをください。TwitterのDMでも大丈夫です。