FFSデータを組織活性化に使うためのステップ


自己理解のためにFFSをメンバー全員に受けてもらったものの、活用しきれていないという声を聞くことがあります。また「FFSを導入したいのだけれど、どういう流れで浸透させていくのか?」というご質問もいただきます。

せっかく受検したFFSデータ。情報をどう活用していけばよいのか。FFSデータを活用していくのが(効率化だけではない)本来のHRTechです。この記事ではFFSを活用した組織づくりの流れをご紹介します。

個性を活かして活躍できる組織づくりに向けて

FFSを活用した組織づくりとは、一人ひとりが個性を生かして活躍できる組織づくりと言い換えられます。「言うは易し行うは難し」というのがこの「個性を生かして活躍」という部分。「あの人ばかり勝手に動いている」と映ると、それをおもしろくないと思う人も出てきます。チームがギスギスしてしまうのです。

「個性を生かして活躍」するとは、勝手に行動しあうことではありません。たとえば進捗管理においても、細かく決め事がある方が動きやすい人と、それゆえに動きづらくなってしまう人と両方います。組織のパフォーマンス向上を目指すなら、全員一律に管理するよりも、一人ひとりが動きやすい環境づくりの方に目を向けたいものです。それが「個性を生かす」ための工夫につながります。つまり応個対応です。

FFS受検〜フィードバック〜ワークショップ〜ストレス診断

FFSを活用した組織づくりの1つめは、診断によって見えてきたそれぞれの個性をチーム内で扱えるようにすることです。たとえば次のようなステップで進められます。

ステップ1:FFS受検+個人レポートの個別フィードバック

FFS受検後の個人レポートはそれぞれの自己理解に活用してもらいます。このときパーソネルアナリストによる個別のフィードバックを受けていただくと、個性因子がストレッサーによってどう変化するかなどを正しく理解できます。

ステップ2:他のメンバーとの関係性を相互理解するためのワークショップの実施

自分とメンバーそれぞれは、どのように個性が異なるのか。その差はお互いにどういうストレスを与える可能性があるのか、上司との差異はどうかといった点を、メンバー全員で共有していく場をつくります。自己理解ワークショップやストレス対策講座を時期をみて開催します。月1回ワークショップの場を設ければ、新規入社者にも受講してもらいやすくなります。

ステップ3:ストレス診断で組織のメンテナンスを定期的にはかっていく

設問数を絞ったストレス診断を3カ月に1回おこないながら、個性が十分発揮されているのか、発揮できずにストレスが生じているのかを定期的に確認していきます。ストレス値をみながら、対策を講じていきます。これが「予防人事」の考えかたです。FFSはストレス学と生理学を基礎として組み立てられた理論ですので、ストレス値の変動を定点観測できるのが、おおきな特長です。

組織単位の分析の実施

FFSを活用した組織づくりの2つめは、組織力向上の面からどう活用していくか、組織単位での分析を追加することです。最初は個人にフォーカスした分析をおこないますが、次に組織分析の実施です。

ステップ1:FFS受検後に、個人レポートと平行してチーム分析を依頼する。

FFS理論は、チーム単位で個性がどのように補完しあうか、チーム分析もおこなうことができます。マネジャーは自組織のマネジメントの留意点についてデータから把握することができます。留意点とは心理的距離から弾きだされるコミュニケーションのポイントです。

ステップ2:チーム分析結果を、チーム運営での工夫に活用する

チームメンバーの関係性や運営の留意点については、個人分析とは別途、チーム分析をすることができます。どういうマネジメントをすると補完関係が起こりやすいかなど、マネジャーの検討材料として活用頂けます。また、このチームにはどういう個性の人が多いかといった分析も出ますので、メンバー全員でチーム理解を深めるワークショップをおこなってもよいでしょう。

ステップ3:FFSの因子を、日常のコミュニケーションの共通言語に使っていく

たとえば今までは「なぜ?なぜ?」「で?」「それで?」「どうしたいの?」と、いわゆる詰めるトークになっていたコミュニケ―ションについて、FFSを使った人同士では、「わたしは弁別性が高いのでどうしてもこだわってしまうのですが」と添えて理由を問うと、相手とのコミュニケーションギャップが埋めやすくなります。
弁別性の因子が上位ではない人にとっては、詳細な論理まで伝える必要性をそもそも感じていない場合もあります。しかし、相手がそれを気にする人だとわかれば、できるだけ論理的に伝えようと考えながら話すことでしょう。メンバー全員が自身と他者との個性の違いを扱えるようになれば、過度なストレスも抱えずにすみます。

組織分析は全社ではなく部署(チーム単位)でおこないます。分析をおこなうことでチームビルディングの基礎データが出力されます。人の配置は、スキル・知識・経験をもとに「なんとなくこの人が良さそう」あるいは「この人が向いてそう」という曖昧な判断でおこなわれています。

FFSデータはそうした判断でおこなわれた人員配置が、どのような心理的距離の個性で形成されているか、コミュニケーションのボトルネックがあるか。あるとすれはどういう点かを明らかにします。つまり課題をデータから発見するためにおこなうのが組織分析です。

レポート出力・作成後はパーソネルアナリスト有資格者による報告会をおこないます。(先々はチーム編成のシミュレーションをおこなうことも可能です。)

FFSを活用した組織づくりの3つめ

FFSを活用した組織づくりの3つめは、メンター・トレーナーが新人の関係を高めるために活用する方法です。上司部下の関係においても、ステップ2以降は同じように使えます。

ステップ1:新人のメンター・トレーナーは、FFSの結果をもとに組み合わせを調整

FFS理論では、新人の初期には同質性の高い人がメンター・トレーナーに付くほうが、早くからパフォーマンス発揮しやすくなることが実証されています。組み合わせを決める段階で、同質性の人同士になることを調整していくとよいでしょう。

ステップ2: FFS受検後に出てくる「上司用」レポートを、メンター・トレーナーに共有する

メンター・トレーナー、あるいは上司の立場から、部下・後輩への接し方を解説したレポートです。部下・後輩の個性理解だけでなく、どういうコミュニケーションが向いているのか、確認することができます。

ステップ3:OJTや面談のときに、因子の観点から部下・後輩の反応を把握する

メンター・トレーナーの人は、部下・後輩の因子を思い出しながらコミュニケーションをとっていきます。
自身と同質性が高ければ、自分がその場面でどう思うかと重ね合わせながら指導してもよいでしょう。
どう伝えたほうが理解が進むのか、どういう環境にすれば動きやすくなるのか、相手の個性にあわせた指導をすることが、成長スピードを早めます。

FFSを活用した組織づくりの観点として、(1)個性をチーム内で扱えるようにすること(2)チーム分析結果をもとに運営を工夫すること、(3)「上司用」レポートを活用していくことをご紹介してきました。

FFSデータをお互いに知っておくと、自分だったらとらない行動でも「こういう個性だからか」と理解できるようになります。特にマネジャーとしては、メンバー1人ひとりの行動予測がつく状態をつくることができます。

なお相互理解のためのワークショップは、パーソネルアナリスト有資格者による運営を推奨します。個性の違いが見えたうえでどう扱うか。その観点を提示しながら進行できる立場の人がいることで、的確な扱い方が把握しやすくなります。

メンバー一人ひとりがお互いの個性を「扱える」職場。それも一種の組織環境です。生産性の高い組織としていくための手段に、FFSのチームでの活用もぜひ進めてみてください。