ストレスとのつきあい方を身につけるために


ストレスが多い状況は仕方ない」――日々つらい方でも、そう思ってしまっていないでしょうか。しかし、下手をすると心身の不調まで引き起こしかねないのがストレスの怖いところ。

自身がどういう時にストレスを感じるかをきちんと把握し、セルフマネジメントできるようにしておくことが重要です。

同じ個性が、ストレスによってポジティブにもネガティブにも

まずはストレスについての理解を深めることからはじめましょう。ストレスは過多であることがよくないと思われがちですが、ストレス過少もまた問題。成長につながる刺激もなくなっているわけです。つまり「適度なストレス状態にある」ことが望ましい状態なのです。

人はそれぞれ個性があります。さらにその個性がポジティブな方向に働くか、ネガティブな方向に働くか、二面性があります。ストレス過多の時にはネガティブに働きます。たとえば、何か依頼をされたときに、「頼られたのがうれしい」「ぜひ相手の役に立ちたい」と受け止める人の場合。

他人のために動きたいという思考がこの人の個性の1つですが、あまりに依頼事をされすぎると「はいはい、やりますよ」と投げやり気味に。依頼の重なりがストレスとなって、個性がネガティブに発揮されるようになってしまったのです。これが続くと、メンタル状態はどんどん悪くなってしまいます。

あなたはどういう時に「ストレス」を感じますか?

ストレス要因を考えていくときに、まず理解したいのは自身の特性です。FFS理論でみると5つの因子の強弱で表されますが、たとえば「D・拡散性」が強い人と、「E・保全性」が強い人ではストレスを感じる要因が異なります。

「拡散性」が強い人は、積極的に動きたい、新しいことは試したいという特性です。すると、「自由に動いてはいけない」「じっくり取り組まないといけない」といった状況は、性に合いません。その状況が続くとストレスが高まっていきます。

一方「保全性」が強い人は、着々とやりたい、慎重に進めたいという特性です。この人は逆に、「自由にやっていいよ」「やり方任せるから早くやってよ」といった状況にストレスを感じるわけです。

ストレス対策の一歩目は、自身にとっての快適な時間づくり

どの個性であってもまずストレスが続く状況を緩和するのが必要です。

ストレス状態を緩和する1歩目は、自身にとって快適な時間を定期的につくること。快を感じるときに脳内で働く神経伝達物質に「ドーパミン」がありますが、快適な時間をもつことでこの放出が増えます。心身のリラックスを起こしていくことが、まずは高ストレス状態を少しでも緩和することにつながります。

楽しいことをつくる気力もない、特に趣味がない、という人がいるかもしれませんが、たとえば30分だけ散歩してみる、毎日道を変えてみるといったちょっとしたことで構いません。あるいは、首や肩を伸ばしてストレッチしてみるのも有効です。血流が悪くなると脳に酸素が届きづらくなるので、そこは少しでも緩和できるとよいでしょう。

第2に整備したいのは、今いる環境です。職場環境は変えられないかもしれませんが、在宅ワークをしているならそこで使っている机や椅子。あるいは照明や音なども気にしたいところです。環境を変えてみると気分も変わるものです。フリーアドレスの職場なら、座る場所を変えて、視界を変えてみるのも一助でしょう。

人間関係からくるストレスは、個性の違いが大きい

第3ステップとして考える必要が出てくるのは、人間関係です。転職の多くには、人間関係が影響しています。人間関係は、ストレスにとっても大きな要因で、自分だけでは変えられないことも多いので少し厄介です。

人間関係の摩擦が生じるのは、主に2つの場合があります。ひとつめは、その人の個性と仕事の進め方があわない場合。たとえば、コツコツ仕事を進めていくのが性に合っている人が、計画も何もない仕事の進め方をよし、としている職場に入ってしまいます。周り全員がそれを常識としていると、仕事の進め方についての話が通じません。毎日お互いがイライラしてくるでしょう。

2つめは、その人の個性と、仕事で関係する人の個性があわない場合。本人はコツコツと仕事をしたくても、たまたま上司がものすごく拡散タイプだと、振り回される感に疲れてしまうことがあります。拡散タイプは、思ったらすぐ行動したい人。「そんな準備する必要はない」と否定までされてしまうこともあり得ます。

もしも自身と同じような思考の上司だったら起こらないストレスが、この上司ゆえに起こるというわけです。これらの状況改善をしていく方法は1つではありませんし、立場によっても変わってきます。まずは今の状況を客観的に把握し、できることを考えていきます。

1つめの、環境そのものがあわない場合。他への配属転換を考えるほうがいい場合もあります。また、もしその人の言うことが聞き入れてもらえる立場であれば、「この部分は計画的にやらないと、こういうリスクがありますよ」「試しに進捗管理できる表をつくってみたので、運用しませんか」などと、自身の考えを具体化して周囲に伝えてみると、反応が変わるかもしれません。単に周囲の人が、計画化が苦手なだけであれば、むしろ重宝されることもあるでしょう。

2つめの、相手と自分があわない場合。まずは、相手の個性を捉えましょう。普段の口ぐせや発言から、どういう思考でふるまう人なのか、分析するのです。全社的にFFSデータがあるなら、それが大いに参考になります。

個性を把握したうえで考えたいのは、相手の思考にあわせてコミュニケーションをしてみること。先ほどの拡散性上司に対しても、ただ言われた都度うなずくだけではなく、提案型で反応するのも1つです。「〇〇の件を変更するとのことですが、このデータを確認してから準備してもいいですか」など、上司が望むアクション型を示しつつ、段取りをしやすいような方向にもっていくのです。

上司との関係がつらいときには、第三者の介入も一助

できればまず、こうした挑戦を1〜2カ月やってみます。それで状況が緩和されてきたら何より。その調子でもっと働きかけていきましょう。一方、何も変わらない、さらに疲れる状況になるなら、チームを変わる、会社を変わるということに思考を向けてもいいかもしれません。

特に、凝縮性が高い人との関係で悩む場合、なかなか状況を改善できないことがあります。凝縮性が高い人は、自身の主張をしっかりもっています。しかしそれは他者にとっては、圧力のようになってしまうこともあります。

もし上司がそういう人で、ミーティングで詰められて弱ってしまうとしたら、まずは冷静に判断できる第三者に同席してもらうというのが1つの方法です。FFS因子でいうと、弁別性の高い人が向いているでしょう。凝縮性が強い人の主張に対して、第三者が間に入って整理してくれる状態をつくるわけです。

それでも収まらず、攻撃的な状況下に置かれてしまったら、環境変化ごと考えるべき次元です。もし新人や若手がそうなってしまっている状況を見かけたら、メンターなど周囲の人が介入したり改善に動いてあげるのも時に必要です。

セルフマネジメントできる状態づくりを

仕事人生のなかで、ストレス過多の状況に直面することは、何度か起こるかもしれません。そこでストレスに翻弄されてしまわないために、まずは自身の個性をしっかり理解しておきましょう。そして、ストレス状態にあっても「こういう点が自身の個性とあわないんだろう」「自身の個性が生きるためにはどうしたらよいだろう」と建設的に考えを進められるようにします。

個性理解と同時に、自身がリラックスできる方法もいくつか持っておきたいものです。もちろん、今見つからなくても問題ではありません。自身の好む環境をイメージすることからでよいでしょう。体を動かす方がすっきりするのか、ひたすら同じことをすることですっきりするのか。そこにも個性が関わってきます。自分の思考行動を客観的に見ながら、ストレスとうまく付き合える力を高めていきましょう。