ワークショップその1:自己理解による対策
自身の因子別ストレッサー対処法を確認するワークの時間を設けました。
今回の参加者は3人。それぞれの個人別レポートを見ながら、まず自身の第1因子、第2因子を確認してもらい、各因子の「想定されるストレッサー」に該当するような状況でどう感じるか、コメントしてもらいました。
たとえば参加者の中には、保全性因子が第1因子の方がいらっしゃいました。保全性にとっての想定されるストレッサーは、「期待を表明された時」「明確な指針がないこと」「未経験な領域で自由な環境を与えられること」といった項目です。
その方からは、「ストレスを感じるのはまさにこういう状態の時です」新しいことを立ち上げる業務に就いた時には、未経験のことは自身で調べながら進めてはいましたが、どこかに不安が残ったまま進めていた感じです」とご自身の行動を振り返ったコメントを頂きました。
よくいただくご相談の例ですが、マネージャーが拡散性が高く、メンバーは保全性が高いという場合です。マネージャーの方は細かい指示はせずに任せるスタイルをとりがちです。メンバーの方にとっては、その振られかた自体がストレスにもなりかねませんが、こういう局面がご自身のストレッサーであることを認識しておくと、事前想定ができます。
「『またその振られ方か』と一度思考を整えるのも、予防の1つになります。そのうえで、『この段取りでよいですか』と確認を入れる。「『ここが不安です』と口にして認識してもらうというのも保全性にとってのストレス対処法となります」といった説明を追加しつつ、自己理解を深める時間にして頂きました。
ワークショップその2:アドバイスをしてみる
後半には、サンプルケースをもとに、アドバイスの仕方を考えるワークも実施しました。たとえば弁別性と受容性が高い人のケースを見てもらい、「この人のストレッサーは何でしょうか」「本人へセルフケアのためのアドバイスをしてください」といった問いを投げかけました。
それぞれの手元で、前半に解説したFFS理論のマトリクスや「因子別の日常観察のポイント」の表を見ていただきながら、注目した観点を発表してもらいます。
「私自身は弁別性因子が高くないのであまり想像ができていないのですが……ストレスとなるのは、曖昧さ、不合理さ、義理人情等ですよね。つまり、指示が曖昧な仕事を任される状況は、個性がネガティブに出ると言うことですか?」
といった形で、皆さん徐々に理解を深めて頂きました。読んだあと、口にだす、聞く、書き出すという行動は知識を脳にインプットするためにとても有効な方法…なのは皆さんご存知のとおりですね。
まさに弁別性が高い人の場合は白黒はっきりつけたい、自分にとっての合理性を軸に考えるという特性があります。義理人情で何とかしてほしいといった依頼をされると、割り切れない思いを抱きます。職場で起こりがちな会話を例にあげることで、参加者の身近な事象も思い起こしていただけたのでしょうか。うなずきを多く頂いたかたもいらっしゃいました。
サンプルケースのあとは、自身の個性を見ながらセルフアドバイスを考えるワークをしたり、部下(後輩)それぞれの個性を把握する方法をご紹介したり、仕事の関わりかたを工夫する方法などをインタラクティブなセッション形式で進めました。
まとめ
この講座ではストレスとレジリエンスに特化して、集中的に理解を深めていただくことに焦点をあてました。理論や具体事象なども折り交ぜながら、かなり掘り下げた解説も入れています。
日々忙しく仕事をする中で、自身の個性を発揮しきれぬままストレスを抱えてしまうこともあることでしょう。ストレッサーとその対処方法を理解することで、事前の予測と対処が随分進むはずです。またストレス状態になるメカニズムや、脳がどのようにストレスに反応するのかについて理解しておくと、自分の行動を自分でコントロールできるかもしれない、という自覚があきらかに生まれます。
今回は部下・後輩を持ちながら第一線で活躍される皆さんにご受講頂きました。ご参加ありがとうございました。