7月12日(火)、株式会社シノプスの方々をお迎えして「研修:ストレスがあなたを前進させる」を開催しました。ストレスを正しく理解し、それぞれにあった対策をワークすることでレジリエンスを発揮するための研修プログラムです。(このレポートは株式会社シノプス様の許可をいただいて掲載しています)
講座の前半では、ストレスの理解やストレッサーに対する脳の反応、⼈の個性に応じたポジティブ反応の引き出しかたについて解説し、後半はワーク形式で理解を深めて頂きました。
ワークではそれぞれの方がどのような時にストレスを感じるのか、事前にFFS診断を受検いただき、その診断結果レポートをもとに深掘りしたり、部下や上司、同僚の個性を思い浮かべながら人によるストレッサーの違いを考えて頂く時間を設けたりしています。
こんご研修の導入をお考えいただくために、講座でお伝えした内容や、ワークでおこなった内容について、いくつかご紹介させていただきます。
オンライン(zoom)でご参加者の経験や実感などをインタラクティブに伺いながら進行しました。
ストレスを正しく理解する
最初にストレスのただしい理解とストレッサーの影響についてお伝えしました。
ストレスとは?
「ストレス」とは、刺激を受けた状態を指します。少なければよいというものではなく、適正範囲にあることで個性のポジティブな発揮が進みます。
何を「ストレス」と感じるかは、人それぞれ異なります。大事なのは自分にとってのストレッサー(刺激の原因)をきちんと把握しておくことです。さらにマネジャーの場合は、メンバーのストレッサー理解も有効です。
ストレス反応(ストレスメディエーター)がどのように起こるか、脳がどのような情報を記憶するかといったメカニズムについては、脳神経科学分野での研究が進んでいます。近年研究が大いに進み、ストレッサーの脳神経への影響が紐解かれてきました。自律神経系、内分泌系、免疫系等々に影響し、いわゆるメンタル不調・不全につながることもわかってきています。
脳がどのようにストレスに反応するのかについてお伝えするのは、自分の行動を自分でコントロールできるという感覚をたかめると同時に、経営者・マネジメント層にとってはメンバーのストレスマネジメントを実践するうえで必須の知識だからです。
たとえばストレス反応については、脳の中の「扁桃体」が強く活性化します。すると、不安や恐怖などの「情動」が引き起こされ、ストレスホルモンと言われるものが合成され、全身に情報として伝わります。交感神経と呼ばれる自律神経が活発になるので、心臓の拍動が高まり、身体全体へのエネルギー供給が高まります。これがうまく発散できればよいですが、溜めたままになると我慢から怒りに変わり、ネガティブな信号が体内に残ったままになってしまいます。
こうした「ゆがんだ状態」が続くと前頭前野の抑制力が低下するため、メンタル不調・不全につながってしまいますが、一時的なゆがみに対しては、元に戻ろうとする力が働きます。これをレジリエンスと呼びます。ストレッサーの理解はレジリエンスを高めるために大いに関わっており、レジリエンスを高めることがいわゆるストレスを受け流していくためにも重要です。ちなみに長期間、ネガティブストレス状態が続くと、回復能力そのものが失われてしまうそうです。
セルフコントロール
次に、人によるストレッサーの違いを理解して、セルフコントロール力を高める観点から、解説をさらに加えました。一部要点をご紹介します。
ストレッサーは大きく4つに分類されます。
- 痛みや寒冷刺激などの物理的ストレッサー
- 味覚や嗅覚に関わる化学的ストレッサー
- 炎症や感染といった生物的ストレッサー
- 恐怖や不安からくる心理的ストレッサー
です。
この講座で扱うのは、心理的ストレッサーに関する個別対応の領域です。物理的・化学的・生物的ストレッサーは、一定の範囲内であれば「慣れる」ものです。しかし心理的ストレッサーは記憶され、思い出すたびに増幅する傾向があります。
ストレスとストレッサーに対して適切な知識があれば、自分にとっての心理的ストレッサーにどう対応すればよいか(セルフ対処法)を理解し、かつその行動をとることができてきます。ただし1回だけでは足りません。行動を繰り返すことで記憶に埋め込まれ、無意識で行動できるようになります。反復することで学びになり、あなた自身が前進していきます。
何がネガティブなストレスになるかは、人によって異なる
たとえば「未知の世界に挑戦できるヨ」という呼びかけを聞いて、ワクワクする人と不安に思う人がいます。ワクワクする人は、「継続的に続けられる」状況には飽きがきやすいものです。
一方不安に思う人は「継続的に続けられる」状況こそイメージが湧いて取り組みやすいと感じるはずです。
ワクワクする人は、FFS理論でいうと拡散性因子が高い人です。この人にとってのストレッサーは、継続性を求められることにあります。一方、不安に思う人は保全性因子が高い人です。この人にとっては先が見えないことがストレッサーになるわけです。
ストレスは低すぎるのも問題ですので、ネガティブに捉えすぎるのもよくありません。1つおすすめしたいのは、ストレスは学びの機会だというように捉え直すことです。自身にとってのストレッサーが働いている状況を自己認識し、「これはもしかして自分にとっての挑戦機会かもしれない」と置き直すのです。
すると、今の状況をクリアするにはどうしたらよいかという思考が働き出します。ストレッサーに対するセルフ対処法をとることができれば、過度なストレスに陥ることを防げます。