脳科学とFFSで解明する「メンタルダウンのメカニズム」:なぜ良かれと思った励ましが“猛毒”になるのか
「最近の若手はメンタルが弱い」 「しっかりコミュニケーションをとっているはずなのに、急に辞表を出された」……。
現場のリーダーや経営層から、こうした悲鳴に近い相談(というか吐露)をおおくいただきます。しかし、その認識は本当に正しいのでしょうか。
実は、「最近の若手は〜」という認識自体、リーダー自身の脳の主観に過ぎない可能性があります。脳科学的な視点で見れば、経験を積んだリーダーの脳は、成功体験の積み重ねによって特定の回路が強化される一方、「シナプス可塑性(新しい情報に合わせて脳が変化する柔軟性)」が加齢とともに弱まり、自分とは異なる特性を許容しにくくなっている側面があるからです。
「自分のことは、案外自分ではわからないもの」。
最新の脳科学とFFS理論(個別的思考行動特性)の視点で見ると、メンタルダウンは「本人の弱さ」ではなく、上司と部下の「脳の反応パターンのズレ」、そしてリーダー側が自らの脳のクセに無自覚であることによる必然的な結果であることが分かってきました。
メンタルダウンというか「合わない」と見切りをつけ離職に踏み切るスピードがとても早いと言いかえたほうが適切かもしれないですね。
1. リーダーの「当たり前」は、部下にとっての「猛毒」
マネージャー層の多くは、厳しい環境を生き抜いてきた自負があります。「これくらいはやって当然」「期待しているから厳しく言うんだ」という言葉。これらはリーダーの脳内では「成功の方程式」として定着しています。
しかし、前述した通り、脳の可塑性が低下し始めると、自分にとっての「最適解」を相手に押し付けてしまう「認知的バイアス」が強まります。
FFS理論では、人間の思考行動特性を5つの因子で分析しますが、例えば「凝縮性(自分の価値観にこだわる)」が強いリーダーが、「保全性(積み上げと安心を好む)」の部下に対し、良かれと思って「もっと型を破れ!」「どうしてやってないの?」と話したとします。
リーダー側は「殻を破るきっかけを与えた」と満足しているかもしれません、このとき脳内ではドーパミンが分泌されています。しかし、部下の脳内では、「安心安全を脅かす攻撃」として処理され、ネガティブストレスが生じているのです。
コミュニケーションギャップはこの瞬間にうまれ、日々歪みが生じていきます。そもそも「コミュニケーションとはなんですか?」と質問したときに、即答できる企業は極めて少ないです。
2. 脳科学で紐解く「メンタルダウン」の正体:扁桃体と前頭葉
なぜ「期待」という前向きなはずの言葉で人は動けなくなるのか。その鍵は、脳内の「扁桃体」と「前頭葉」の関係にあります。
扁桃体(恐怖の番人)の暴走
リーダーから「なぜできないんだ?」「もっと主体性を持て」と、自分の特性に合わない要求を繰り返されると、脳の奥深くにある「扁桃体」が生命の危機としての恐怖や不安を検知します。
前頭葉(理性の司令塔)の機能停止
扁桃体が過剰に反応すると、思考や感情をコントロールする「前頭葉」への血流が阻害されます。
- 頭が真っ白になる
- 判断力が低下し、単純なミスが増える
- 「すみません」以外の言葉が出なくなる
- 「もうやるなよ」とその場を回避すると報酬としてドーパミンがでます
これが、部下が「期待通りに動かない」状態の正体です。やる気がないのではなく、物理的に脳がフリーズしているのです。リーダーが自らの脳の硬直性に気づかず、「もっと頑張れ」と励ますことは、エンジンが焼き付いた車にアクセルを思い切り踏み込ませるような、極めて危険な行為です。
3. FFS理論別:部下を潰す「NGワード」と「限界サイン」
たとえばFFS理論を用いると、どのタイプの部下にどの言葉が「毒」になるのかが明確になります。
① 「弁別性(白黒はっきりさせたい)」が高い部下へのNG
弁別性の高い人は、事実と論理を重視します。
- NGワード: 「とりあえず気持ちでカバー」「忖度しろ」「空気で察しろ」「みんなと揃えて」
- 脳の反応: 曖昧な指示は、弁別性にとって「正解のない迷路」に放り込まれる理不尽です。
- 防衛策: 常に「AかBか」の判断基準を明確にし、数値や事実で会話すること。
② 「受容性(柔軟に受け入れたい)」が高い部下への限界サイン
受容性が高い人は、周囲の期待に応えようと自分を押し殺してまで行動します。
- NGワード: 「NOと言わないのはやる気がある証拠だ」「お前に任せた(放置)」
- 限界のサイン: 普段より過剰に謝罪が増える、あるいは「表情が能面のように固定される」。彼らは限界まで「大丈夫です」と言い続けます。
- 防衛策: 「困っていることはない?」ではなく「今、抱えている案件を3つ教えて」と具体的にタスクを剥がしてあげること。
4. 「期待」という名の呪縛を解きませんkじゃ
多くのリーダーは「期待しているからこそ厳しくする」と言います。しかし、FFS理論の視点で見れば、それは「自分と同じ特性であることを期待している」に過ぎないケースがほとんどです。
- 拡散性のリーダーが、保全性の部下に「もっとリスクを取れ」と迫る。
- 凝縮性のリーダーが、受容性の部下に「もっと自分を主張しろ」と迫る。
これは、ネガティブバイアスを促進するだめで、ポジティブなストレス反応を引き出すことは不可能です。
5. まとめ:個性に合わせることこそが最強のストレスマネジメント
ストレスマネジメントの本質は、福利厚生を充実させることでも、産業医を増やすことでもありません。「上司が部下の脳の特性(FFS)を理解し、ストレッサーを与えないコミュニケーションをとること」です。
部下の脳を「恐怖」から解放し、本来持っている「強み」を発揮させる。それだけで、チームの生産性は劇的に向上します。
貴社のチームを「科学的」に分析しませんか?
「良かれと思った一言」が部下を潰していないか。メンバーそれぞれの「脳の反応ポイント」はどこにあるのか。 FFS理論を用いたチーム分析で、組織の隠れたリスクを可視化し、最強のチームビルディングを実現しませんか

