「良い人材が来ない」「せっかく採用してもすぐに辞めてしまう」 そんな悩みを抱える経営者や人事担当者のかたが多いと感じています。いま「パラダイムシフト」の渦中にいるがゆえの悩みでしょうか。
かつて、採用とは企業が応募者を「選ぶ」場でした。しかし、現代の採用は「企業が選ばれる」時代へと突入してしまいました。
インターネットの普及によって加速した採用市場の変化から、面接の場で起きている「脳の同期」、そして直感の正体までを共有いたします。どうして「ピンときた!」採用が失敗したり、入社後にすぐ見限られてしまうのか。その答えは、「脳のコンディション」にありました。
1. インターネット出現から、いっきに始まっていた「情報の非対称性」の崩壊
「採用難」を時代のせいにする前に、私たちが直視しなければならない事実があります。それは、インターネットが出現した瞬間から、企業と応募者の「情報の格差」は消滅したということです。
皆さんは、自社の口コミサイト(OpenWorkやキャリコネなど)をチェックしているでしょうか? 「そんなの気休めだ」と思っているとしたら、それは大変危険な兆候です。載っていない?それは存在していないと同じです。
今の応募者は、面接に行く前に、あなたの会社を徹底的に「確認」しています。
- 残業代は本当に出るのか?
- 上司は高圧的ではないか?
- 「風通しが良い」は本当か?
SNSや口コミサイトによって、企業の「内情」は可視化されました。どんなに洗練された採用サイトを作っても、採用広報担当者を配置しても、現場の生々しい声(=ストレッサーの正体)は隠し通せません。
「選ぶ側」だと思い込んでいた企業が、実は面接のチャイムを鳴らす前から「選別」の俎上に載せられているのです。
2. 「直感」や「人当たり」の採用が、組織を崩壊させる理由
これまでの日本企業の多くは、学歴や面接官の「直感」や、応募者の「人当たりの良さ」を評価基準にしてきました。しかし、早期離職が止まらない現状は、その手法が「限界」であることを証明しています。(もちろんそうではない会社もおおくあります)
「直感」の正体は、脳の「扁桃体」と「ACC」
脳科学において、直感とは決して「適当な判断」ではありません。
- 扁桃体: 好き・嫌い、安全・危険という原始的な「情動」を司る。
- ACC(前頭帯状回): 期待と現実のズレを監視し、違和感を検知する。
リクルーターが「この人は良さそうだ」「自社のカルチャーにフィットしそうだ」と感じる時、それは往々にして「自分と似たタイプ(脳の特性)」を検知し、安心しているに過ぎません。これを「類似性バイアス」と呼びます。FFS理論では「同質が意気投合した」と表現します。
しかし、組織に必要なのは「自分と同じような人」ではなく、「その環境で最高にパフォーマンスを発揮できるであろう特性」を持つ人です。リクルーターの「なんとなくの好印象」で採用された人が、現場に入った途端に「能力を発揮できない」「ストレッサーに耐えられない」と去っていくのは、脳の特性と環境がミスマッチを起こしているからです。
3. 面接で起きている「脳波の同期」
驚くべきことに、最新の研究では、コミュニケーションが円滑に行われている時、「話し手と聞き手の脳波が同期する」現象が確認されています。
これをリクルーターと応募者の関係に当てはめると、恐ろしい事実が浮かび上がります。 察する能力が高く、優秀な人材ほど、リクルーターの言葉ではなく「脳のコンディション」を直感で見抜いているのです。
リクルーターの脳が「不健全」なら、優秀な人材は逃げていく
リクルーターが日々過度なストレスに晒され、脳が「防衛モード」になっている場合、その不安定な脳波は応募者に確実に伝播します。
- リクルーターが「うちは最高だよ」と口では言っても、その脳が「恐怖」や「疲弊」を感じていれば、応募者の扁桃体は「この環境は危険だ」というアラートを鳴らします。
- 優秀な人ほど、「ここが最高にパフォーマンスを出せる環境か」を、言葉以前の情動(直感)で判断します。
つまり、採用手法(テクニック)を磨く前に、リクルーター自身の脳が「強み」を発揮し、健全なコンディションにあるかが、採用の成否を分けるのです。
面接にでてきたかたの態度がいい印象ではなかった。高圧的だった。話がテンプレだった。という感想はじっさいよくきく話です。
4. FFS理論が可視化する「採用の最適解」
ここで有効なのが、人の思考行動特性を数値化するFFS理論(Five Factor&Stress)です。
FFS理論では、人が内部・外部からの刺激(ストレッサー)をどう受け止め、それが「ポジティブ」になるのか、あるいは「ネガティブ」になるのかの脳の反応を5つの因子に分類し、個人ごとに強弱を数値化します。
採用においてFFSを活用するメリット:
- 「相性」を科学する: 面接官と応募者の特性を事前に知ることで、脳波の同期を意図的にコントロールし、リラックスした状態でどういう局面でポジ/ネガになるのかを引き出せます。
- 配属先での「ストレス反応」を予測: 配属先のリーダーの特性と、応募者の特性を掛け合わせ、その人の「ストレス反応」を事前に予測できます。
- 「選ばれる理由」を言語化する: 応募者の因子(例えば、拡散性が高いなど)に合わせ、その人の脳が最も喜ぶ「報酬(やりがい)=ドーパミン」を提示できます。
5. まとめ:テクニックではなく「脳のコンディショニング」を
採用のパラダイムシフトに対応するためには、これまでの「選ぶための評価シート」を捨て、「相手の脳と同期し、選ばれるための人間理解」にシフトしなければなりません。人間は脳の働きによって生命を維持しています。
リクルーターの人間性が優れているか、テクニックを知っているかも重要ですが、まずはリクルーター自身の脳が、その組織で活き活きと機能しているか。その「脳のコンディション」こそが、最強の採用ツールなのです。
さて、ここまで「採用」の観点から脳と個性の関係をお伝えしてきましたが、実はここにはさらに深い「闇」が隠されています。
なぜ同じ環境なのに、Aさんはイキイキと働き、Bさんはボロボロになって、Cさんは秒で辞めていくのか? なぜ、マネージャーの「良かれと思った一言」が、メンバーの脳を侵食する猛毒に変わるのか?
次回の記事では、いよいよ本質的なテーマである「脳とストレスの正体」、そしてFFS理論で解明する「メンタルダウンのメカニズム」について書く予定です。
貴社の「採用力」を脳科学でアップデートしませんか?
「直感採用」の限界を感じているなら、まずは自社のリーダーやリクルーターの「脳の特性(FFS理論)」を可視化することから始めてみませんか

