個性を引き出すマネジメントが定着した会社は強くなる


組織の持続的成長のために必要なマネジメントとは――?特に、ある程度成長が進んできたフェーズでは、まさにマネジメントの工夫による組織力の発揮が、次の成長を左右します。そこで要となるのは中間管理職たるマネジャーの皆さん。

現場の各チーム単位で行われているマネジメントの質こそが、組織力発揮を左右します。具体的にはどのような点がポイントなのか、考察していきます。

ビジョンに集うフェーズ。組織力で勝つフェーズ。

あの会社は社員がみんなイキイキしているようにみえるよね

どんな工夫をしているのですかね

ちょっと調べてみてさ、ウチも参考にして導入しようじゃないか

たしかに他社のすぐれた取り組みは、積極的にベンチマークしたいところです。しかし、「あの会社がやっている施策を取りいれてみよう」と導入しても、同じようにうまくいくとは限りません。

HR界隈でも事例にあがることがおおいGoogleやNetflix。ひとことで言えばそれぞれの企業文化と企業ステージ、社内環境があるから、ユニークネスな施策をうてるのです。

まずここで押さえておきたいのは、「組織には成長フェーズがある」ということです。たとえば、創業期と成熟期の組織では、全く特色が異なります。施策もフェーズに合ったものでないと機能しません。

非常に大まかな分類ですが、組織の特色を4つのフェーズで比較してみましょう。

創業期経営者のビジョンに共感する人が集まるなど、創業時の熱量が組織の原動力になっています。少数精鋭組織なので、さほど仕組みは必要ではありません。
拡大期IPOを目指すなど、成長展望が魅力となり人が増えてきます。属人的運営から仕組み化へと、変更が必要な場面が増えてきます。
成長期事業が軌道に乗ってくる時期です。業務量も業務品質も両方高めていく必要があり、マネジメントがより重要になってきます。
成熟期複数事業やグループ経営なども進み、安定する時期です。反面で、挑戦心が薄れたり風土の硬直化なども起こったりしがちで、組織としての活力が期待されます。
企業ステージ毎の主な特長

上記の4つのステージの中でも「成長期」は組織力が大きく左右します。極端な言いかたをすると、拡大期は「まだ着手できていないこと」を次々実行して伸びることができる時期です。いっぽう成長期は「やれることをひと通りやった」あとに、さらなる拡大や価値創出が求められてくる時期です。このステージでは施策アイデアだけではなく、生産性や効果性といった点が、より重要になってきます。

そこで必要なのは、組織メンバー全員が力を発揮している状態になること。それができないと、一部の人に偏りがでた結果、どこかで成長のひずみが出てしまいます。

マネジメントの役割は、組織人数で変化する

おおくの組織では、拡大期から成長期にかけて組織の人数が増えていきます。中途採用や新卒採用に積極的なベンチャー企業が思い浮かびませんか。

一般的には、人数が増えると組織の階層化が進みます。このとき重要性が増すのは中間管理職。マネージャー、ミドルマネジメントといわれる職域です。この職種の方々の業務内容は、人数が少なかった頃に比べてマネジメントの役割が大きくなってきます。

また人数が増えると、多様性も広がります。今まで暗黙的に合意していたようなことが伝わらない人が出てくるかもしれません。その状況を放置してしまうと、属人化組織から抜け出せません。

組織化が進むとは、たとえば情報伝達やコミュニケーション方法を最適な形にリ・デザインすること。冒頭で挙げたような「イキイキとした組織」は、まさに的確な組織運営ができている状況と言い換えることもできるでしょう。

いっぽうの属人化組織では、社員間のシナジーがなかなか起きません。たとえば、「チームは気にせず、割り切って自分の仕事をやることだけに集中している人」「中途採用で入ったけれど、組織のカルチャーになじめず一歩引いてしまっている人」「マネジャーとの相性が悪くて、モチベーションダウンしている人」といった人の周りにシナジーは生まれているでしょうか。

チーム内の建設的な関係を高めていくのは、組織力向上を進めるうえでまず必要なことです。

よし。毎週の1on1をルール化して、マネジャーがしっかり個々人を見られる制度を整えよう

と施策をうつかもしれません。しかしルールを整えたからといって、組織力が高まるわけでもありません。マネージャーを含むメンバー個々人の行動変容、あるいは行動強化が起こること。そのためのマネジメントとしては何が必要なのか。ここからお伝えさせてください。

個性が変われば「積極的な行動」の仕方も変わる

先ほどの例で考えてみます。まず「割り切って自分の仕事だけをやる人」。忙しさも理由かもしれませんが、どんな動きをしてほしいか、役割期待が伝わっていない場合もあります。

また「組織のカルチャーになじめず引いている人」。なじめないから引いているのか、それとも物静かな性格の人なのか。突っこんた話をしていないため、本人を理解できていないだけかもしれません。

いずれも、本当はどういうことを考えている人なのか。どういうことが当人の原動力となるのか。それを把握したうえで役割期待を伝えると、当人の納得度も大きく変わってくるはずです。

周りを巻き込んで積極的に動いてほしい」というのは、ほとんどのマネジャーがメンバーに対して望むことでしょう。注意したいのは、動きかたに共通した型があるわけではないことです。

たとえば、「会議でよく発言する」「外のネットワークをどんどん広げる」「物怖じせず営業電話をかける」といった行動は、積極性の表れそのものに見えます。

しかし会議での発言は少なく、営業電話をガンガンかけるタイプではなくても「物静かに着々と手を打つ」という形で積極性を発揮する人もいます。

「積極的に動くとはこういうことだ」と偏ったイメージを持つのではなく、個性ごとに発揮行動が異なることを、マネジャー全員が理解していることは、組織力を強化するうえで重要なポイントです。

FFS理論を理解すれば行動特性がわかる

FFS理論を使って個性の違いによる「積極性の発揮」について考えてみます。

FFS理論的視点では働きかけ方を個性に応じて変化させます

まず、拡散性因子が強い人。そもそも行動したいタイプの人なので、ふだんから積極的に見えます。しかし関心が高い分野でないと、形にならずに終わってしまうこともあります。

マネジャーとして注意したいのは、本人と方向性を握ること。そのうえで動ける環境をつくるとともに、やりっ放しにならないような補完体制も準備しておきたいところです。

次いで保全性因子が強い人。着実に積み重ねることを好みますので、ともすると挑戦心に乏しいように見えるかもしれません。でも、そんなことはありません。事前準備を念入りにしたり、あらゆる情報を集めたうえで、しっかりと行動します。確信が高まるほど、新たな道を切り拓く過程も力強くなるでしょう。

マネジャーとして注意したいのは、こまめな確認をするほうが当人も安心して動きやすくなるという点。「自律的に動いてほしいから、任せておこう」と放置するのではなく「自律性を重んじつつ、適宜声をかけておこう」とするほうが、伸び伸びと動くようになります。

さらに弁別性因子が強い人。具体性や因果関係を確認したうえでの明確な判断を好みます。この因子は状況が見えないまま動くのはムダだ、と思うタイプです。もしこの人が積極的に動けていないとしたら、本人が納得できるような状況ではなく、合理的に思えないからかもしれません。

マネジャーとしては、本人にとっての優先順位がどうなっているか、なぜそうなっているかを確認するのが有効です。優先度が高いと本人が判断すれば、最も合理的なやり方を考えてくれますので、チームをリードする立場にもなってくれるはずです。

個性を理解して、それぞれと向き合うことを組織の常識に

前述した別の例、すなわち「マネージャーとの関係性もあってモチベーションダウンしている人」についても考えてみましょう。実際は、本人のパフォーマンスがよくない場合もあれば、上司が長所を理解できていないこともあり、こうした人間関係のズレは、いろいろな組織で、いまも世界のどこかの組織で起こっています。

1つ共通して言えるのは、建設的な向き合い方ができていない可能性があること。本人のパフォーマンスが悪かったときに、マネージャー自身のモノサシだけでコミュニケーションをとるのは危険です。

相手の個性が自分と同じとは限りません。「きっとこうだろう」と相手を決めつけずに、相手の個性に響く目線で伝えることが必要です。

たとえば、保全性因子の強いメンバーに対し、拡散性因子が強いマネージャーはイライラするかもしれません。

すぐやるって言ったのに、何でまだできていないの?

でも保全性のメンバーにも言い分があります。

来週締め切りと言っていたから、さっそく情報収集から取りかかったんじゃないか!どうしてこの段階で報告書がつくれると思っているんだよ!

たしかに保全性のメンバーは、すでに仕事に取りかかっているんです。情報を先に調べておく分、ここでは時間をとるかもしれませんが、後工程がぐっと縮まり、結果的に高い成果を出すことも十分あり得ます。

マネジャー層がメンバーの個性を理解し、個々の強みを生かすアサインメントやマネジメントをおこなえるようになると、相互の理解不十分によるスレ違いがなくなります。

「少なくとも相手は自分の特性を分かってくれているな」と思うだけで、心理的安全性はぐっとあがります。これを属人的なノウハウではなく、マネジャー層全体の常識として埋め込むことができると、組織力向上の大きな“武器”になっていきます。

自己理解、他者理解がすすんだ組織が、心理的安全性の高いチームになる

心理的安全性の高いチームは、組織の活力の源です。そのためにはお互いをよく知り、強みをそれぞれが生かす状態づくりが重要です。組織力を高めるべきフェーズに差し掛かったときには、ルールや施策づくりだけでなく、「個に向き合う」「個の力を引き出す」という組織づくりの原理原則への理解をマネジャー層の必須スキルにしていくことを、ぜひ考えてみてください。

  • 組織が拡大する中で、組織力の重要性が高まるフェーズがくる
  • 組織力向上の基本は、個性発揮をいかにおこなうか
  • 個性に合ったやり方があることを理解する

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