【マネジメント・技術編】「自分が変わる」のではなく「やり方を変える」


脳が喜ぶポジティブ・マネジメント:FFS理論で引き出す「部下の脳の快楽報酬」

「メンバーに合わせろと言うの?」「結局、われわれが折れなきゃいけないの?」

前回のブログで、リーダーの放つ言葉が部下の脳にとって「毒」になる可能性をお伝えした際、多くの方がこう感じたかもしれません。実際に質問がとんでくることもあります。

自分が否定された気持ちになると、ほぼこうした反応がでる/黙る、のどちらかです。誤解しないでいただきたいのは、ストレスマネジメントの本質は、リーダーが自分を押し殺して、合わせることではありません。

「相手の脳の特性という『仕様書』に合わせて、インプット情報(言葉や接し方)を最適化する」という高度で知的なゲームです。

今回は、部下の脳を「恐怖(フリーズ)」から「快楽(ドーパミン)」へと切り替え、自走するチームを作るための具体的な手法をすこし解説します。

1. 「自分を変える」必要はない、ただ「スイッチ」を切り替えるだけ

多くのリーダーがマネジメントを苦痛に感じるのは、「自分の性格を変えなければならない」「がまんしなければならない」とどこかで思い込んでいるからです。しかし、FFS理論が教えてくれるのは、性格の矯正ではありません。

マネジメントの一つに、「翻訳機」を持つことがあります。相手の「強み」を伸ばし、「弱み」は補完する。というシンプルな考え方です。「弱み」を叱咤し、なんとか矯正しようとするため、ハレーションが起きるのではないでしょうか。

例えば、英語しか通じない相手に一生懸命日本語で怒鳴っても、相手は混乱し、恐怖を感じるだけです。これはあなたの人間性が悪いのではなく、単に「言語(インプット情報)」が間違っているだけですよね。

  • リーダーの役割: 相手に届く「言語」に変換して伝えること。
  • メリット: 正しく伝われば、部下は勝手に動き出します。結果として、あなたの管理コスト(イライラや確認作業)は劇的に減ります。

「相手の個性(脳)に合わせる」のは譲歩でもなく、最短ルートで成果を出すための「戦略的選択」です。


2. 脳科学が証明する「快楽報酬」と「パフォーマンス」の相関

脳には、自分に合った刺激を受けると「ドーパミン」という報酬物質を出す仕組みがあります。これが、いわゆる「脳が喜んでいる」状態です。(喜びすぎると依存症になりやすく、、)

ドーパミンが放出されると、脳のパフォーマンスは最大化されます。

  • 創造性の向上: 前頭葉が活性化し、新しいアイデアが出やすくなる。
  • レジリエンス(回復力): 多少の困難も「挑戦」として楽しめるようになる。
  • 自律性の向上: 指示を待つのではなく、自ら動くことに快感を覚える。

リーダーの仕事は、部下の脳をこの「ドーパミン・モード」にハックすること。そのためには、FFS理論による「個性因子の強弱の理解」が不可欠なのです。なぜなら、ストレッサーという刺激に対する反応で個性がポジネガにゆらぐ、という個性の捉え方をすることについてFFS理論は圧倒的な実績を有しているからです。


3. FFS別:脳を「快楽モード」にする具体的な入力変換

では、具体的にどう「入力信号」を変えれば、脳はポジティブに反応するのでしょうか。主要な因子を例にすこしだけお伝えさせてください。

① 「拡散性」が高い部下の脳を喜ばせる

拡散性の強い人は、「新しさ」や「自由」にドーパミンが出ます。

  • 従来の伝え方: 「この手順通りに、間違いなく、毎日やってほしい」
  • ポジティブ変換: 「このプロジェクト、いつものオリジナルセンスで面白くしてみてくれない? 枠からはみ出してもいいから」
  • 結果: 「信頼されている」「自由にやれる」と感じた瞬間、脳はフル回転を始めます。

② 「保全性」が高い部下の脳を喜ばせる

保全性の強い人は、「準備」や「体系化」に安心し、着実な進捗に喜びを感じます。

  • 従来の伝え方: 「とりあえずやってみて!走りながら考えよう」
  • ポジティブ変換:まずは全体のスケジュールと手順を固めよう。 必要な情報は全部渡すから、着実に進めてほしい。現時点でわからないことあれば教えて」
  • 結果: 予測不能な恐怖が消え、「これならできる」という確信が、高い集中力を生みます。

③ 「凝縮性」が高い部下の脳を喜ばせる

凝縮性の強い人は、「意義」や「正義」に強く反応します。

  • 従来の伝え方: 「会社の方針だから、文句を言わずにやってくれ」
  • ポジティブ変換: 「この仕事は、業界の古い慣習を壊すために必要なんだ。
  • 結果: 自分の存在意義と仕事が直結したとき、無敵のエネルギーを発揮します。

4. 「やり方を変える」ことで得られる、リーダーにとっての最大の報酬

「部下の脳を喜ばせる」マネジメントにシフトすると、リーダー自身にも大きな変化が訪れます。

  1. 「言わなくても動いている」快感
    • 相手の特性に合わせた「インプット」を一度行えば、あとは部下が自らのエネルギーで動くようになります。「なぜ動かないんだ!」と怒鳴るエネルギーを、よりクリエイティブな仕事に使えるようになります。
  2. 感情的な対立の消失
    • 「やる気がないんじゃないの」というネガティブバイアスが、「このタイプにはこのアプローチが効くはずだ」という論理的な検証に変わります。マネジメントが「感情のぶつかり合い」から「科学的な実験」に変わるのです。
  3. チームの心理的安全性の向上
    • リーダーが個性を認め、適切な刺激を与えているチームでは、メンバーは「自分のままでここにいていい」と感じます。この安心感こそが、イノベーションを生む土壌になります。

5. まとめ:マネジメントは「人間理解」という最高の知力戦

加齢とともに脳の可塑性が弱まるのは、生物としての宿命です。しかし、私たちは「FFS理論」というツールを使って、その限界を超えることができます。

「自分が悪いの?」と自責したり、「部下が変わるべきだ」と他責したりする時間は正直無駄なのです。

大切なのは、「相手にどう動いていただくか」という技術に習熟すること。 FFS理論を導入することは、チーム全員の脳に「最高級の燃料」を注ぎ込むことができます。

相手の個性に合わせたスイッチの切り替え。それだけで、チームの空気は劇的に変わり、数字は後からついてきます。